起床直後
エレニス わたしたちは三年も眠ったままだったんですね……。
クーロン ええ。もう目覚めないのかと思うほどの昏睡状態でした。
イルフェス ……。
アルファム どうしたイルフェス?
イルフェス なんかさ、視界が全然違う。俺、めちゃくちゃ背が伸びてない!?
エレニス まあ、成長期ですからねえ。
ウイリル ……いいなあ。
アルファム ウイリルも成長しているさ。前は姫よりも低かっただろう?
ウイリル ……ん。でももう少しほしかったな。……見上げなきゃイルと目線があわないもの。
イルフェス そうだなー。ウイは俺よりだいぶちっこいな。(ぎゅーっ)
ウイリル ……♪
クーロン ……っ!?
イルフェス なに?
クーロン いえ、何も。ウルがいいなら僕から言うことはありません。
イルフェス ……? そういや、おっさんや姫様はあんまり変わってないな。
アルファム 私たちは成人しているからな。
エレニス 成長期はとうの昔に終了していますから。
イルフェス そっかー。
クーロン さて。親交をあたためるのはこれくらいにしましょう。そろそろ湯殿の準備もできているでしょうし、体を清めてきてはいかがですか。
エレニス そうですね。三年もお風呂に入れなかったのですもの。きれいにしたいです。
アルファム 明日の謁見のためにも清潔にしておくべきでしょう。
イルフェス ウイ一緒に入ろうか。
ウイリル ごめんね。僕は一人で入りたいから。
エレニス わたしも遠慮しておきますね。
イルフェス いや、姫様誘ってないし。つーか当たり前だ。
アルファム もしもイルフェスが姫を誘っていたなら……ちょっとした惨事が起きていたところですよ。
イルフェス 絶対やらねー。
アルファム それならいい。さあ、風呂にいくぞイルフェス。
イルフェス おっさんが一緒に入るのか!
アルファム 気にするな。単なる時間短縮だ。
イルフェス 別に気にしてなんかいないけどな。じゃあ、行ってくる。
(二人がいなくなって)
クーロン ……彼は何を考えているんですか、ウルをいきなり抱き締めたり、湯殿に誘ったりするなんて。
ウイリル あ、おじさん……イルは僕を男だと思ってるから。
クーロン ……そうなんですか?
ウイリル ……うん。僕は竹筒みたいな体型だし、帽子で耳隠してるし。
クーロン なぜ話さないんですか?
ウイリル ……イルはね、女性が怖いんだって。だから僕が女の子だって知ったら避けられちゃうかもしれない。それが、嫌なんだ。
クーロン そうですか。でもずっと黙っているのはよくないですよ。
ウイリル ……うん。いつか、必ず自分から告白するよ。でも……僕が女の子だって知ってもイルは親友でいてくれるかな……。
エレニス 大丈夫ですよ。知り合って間もなかったわたしだって、時間はかかりましたが受け入れてくれたんですもの。親友のウイリルさんならすぐです。
ウイリル ……うん。そうだといいな。
イルフェス ただいまー!
ウイリル お帰り、イル。
クーロン ……イルフェスくん。
イルフェス な、なに? 何か顔が怖いんだけど……。
クーロン ……ウルを泣かせたら承知しませんよ?
イルフェス ……お? おう!
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