Promise of reunion

02


 ……のもつかの間だった。不意にクイっと顎を持ち上げられる。
 そして唇に何かを重ねられた。
 それがトランの唇だと気付いたのは、それが離れようとした時だった。

  離したくない……! 

 強い衝動がクリスの内を満たす。
 離れかけた彼の唇を自ら追いすがり、再び強く押し当てる。
 驚き離れようとする彼を抱き寄せて、より深く重ねる。
「んん……」
 深く、深く、より深く……。
 熱い呼気が肺の中を満たし、脳を痺れさせてゆく。
 いつまでそうしていただろうか……。トランに肩をつかまれ、そっとひきはがされた。
 顔が熱い……。
 自分は今、いったい何をしたんだ……!? 
「お別れの、軽いキスのつもり、だったんですけど……」
 頬をほんのり染め、荒い息をつきながらトランは言った。
「っていうか絶対殴られると思ってたのに……、舌入れやがったな!?」
 その言葉でどこかで何かがキレた。
 彼の手を取り、引き寄せる。そして抵抗する暇を与えず押し倒し覆いかぶさった。
「ちょ、ちょっとまってまってーー!  クリスいきなり何を、どうして!?」
「だって、これは夢なんだろう?  だったらやれるだけヤっとかないと損じゃないか」
「どういう理屈だ!? っていうか、わたしは本物だしっ!」
 クリスは捨てられた子犬のような目でトランを見つめて言った。
「お前が死ぬほど嫌だっていうんなら、諦める……」
「そ、その目は、表情は反則……」
 こんなすがるような目で見つめられては、拒むどころか、
 "もうわたし死んでるし……"
 ……などと茶化すこともできない。
「駄目、なのか……?」
「え? あ、あ〜……。ク、クリスってそっちの趣味があったんですか」
「いや、ない。なかったけど……。でも、この体にお前のことを刻みつけておきたいんだ」
「この体勢だと刻みつけられるのはわたしの方なんですが……」
 クリスに組み敷かれた姿勢でトランが言う。
「……じゃあ、ソレはまた後で……」
「こらまて、何回ヤる気だ!?  っていうかヤったことあるんですか!?」
 クリスは大真面目な顔で堂々と言った。
「ヤったことはないけど、ヤラれたことなら!!」
「そんな事、堂々と宣言するんじゃない!」
 二人の息が先程とは違う意味で荒くなる。
「……で! いいのか駄目なのか?」
「クリス……」
 トランは唾を飲み込むと覚悟を決めた。あとはそれを口にだすだけだ。
「わたしが……欲しい?」
「……欲しいよ」
 とろけそうな笑顔で言われては、抵抗する気力も意志も消えるというものだ。
 トランは困ったような、照れたような微笑を浮かべて言った。
「優しく、してくださいね……?」
「うん」
 そしてクリスはにこやかに微笑み、こう続けた。
「……いただきます」
「おいコラまて! "いただきます"ってなにぃ……」

 ……その後、明け方近くにノエルの夢に現れたトランは、やけに疲れ果てていたという……。





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Scribble <2006,12,19>