Sweet sleep
01
きっかけはノエルのこんな一言だった。
「レントさんって……いつ眠っているんですか?」
「……なぜでしょうか、継承者殿」
「いえ、レントさんっていつも寝ずの番をしてらっしゃるじゃないですか」
「そうですがそれが何か」
「昼間もちゃんと起きてらっしゃるし、ちゃんと寝てるのかなって」
レントが無表情のままノエルの言葉に答えた。
「ちゃんと必要最低限の睡眠はとっております」
「どれくらいですか?」
「三時間ほど」
「「待て」」
今まで話に参加していなかったクリストエイプリルが同時に突っ込みを入れた。
「三時間ってそれは足りてないだろ!?」
「俺も昔は睡眠時間を削るなんてざらにあったが……毎日となると三時間は少なすぎだ」
一気にまくし立てる二人をレントは無表情に見つめ、少し首を傾げて問い返した。
「わたしが足りているというのだから、キミたちが気にする必要はない」
「いや、気にするだろ普通!」
「特にお前はギルドの司令塔。いざというときに寝不足で頭が混濁してました、じゃ洒落にならん」
一行に引く様子を見せない二人にレントは困惑していた。なぜこの二人は自分の睡眠時間など気にするのだろう?
「レントさん」
部屋に静かなノエルの声が響いた。なぜだかわからないが、一瞬で部屋が静まり返る。
「今日から寝ずの番は禁止、あたしたちと一緒に寝てください」
「しかし何かあって」
「ギルドマスター命令です」
ノエルの表情は聖母のような優しい笑顔、だが声は氷点下の冷たさだ。
「……わかりました、継承者殿」
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Scribble <2007,09,30>