Sweet sleep

02


「よく考えれば最初からこうしてればよかったんですよね。もう誰にも追っかけられたりしてないんですから!」
 ノエルがベッドに寝転がり笑顔でレントに話しかける。
「……」
 レントは何も答えない。
 この世に生を受けていきなり『ノエルを守れ』と命令された彼には、ノエルの身の安全を守る事が第一条件に刷り込まれてしまっている。そのため、寝ずの番をするのは当たり前のことであり、それをしてはいけないといわれた事がなぜだかわからないのであろう。
「継承者殿、お聞きしたいことがあります」
「なんですか?」
「なぜ、私は継承者殿と同室なのでしょう」
「……というか私たちも一緒なんだけどな」
「……本気でノエルしか目に入ってないなこいつは」
 クリスとエイプリルがこっそりツッコんだ。四人ともすでに寝巻きに着替え、それぞれのベッドの上に座ったりして談笑をしていたところだったのだ。
「だって、別の部屋にするとレントさんこっそり見張りをするでしょう?」
 ……図星だった。
「なら、もう一つ。……なぜ、継承者殿はわたしのベッドにいるのでしょう?」
「だってこっそりベッドから抜け出しそうなんですもの」
 ……これまた図星だった。
 しかしこれにはさすがにクリスが……
『年頃の女性が男と同じベッドで眠るなんて!』
 ……と正論に基づいた難色を示したのだが、エイプリルの……
『レントにそんな知識があるとは思えない』
 ……という言葉と、ノエルの……
『レントさんがあたしを傷つけるわけないですよ』
 ……という言葉に反論できず、押し切られてしまったのだ。
 まあ、実際生まれたばかりのレントにそういう知識があるとは思えない(というかそんな知識が元から刷り込まれていたらかなり嫌だ)し、ノエルが第一条件の彼が彼女を傷つけるわけがない。加えて言うならばこの部屋には自分たちもいるのだ。何かあればとめればいい。
「じゃあ、もう寝ますから、レントさんお布団に入ってください」
「はい」
 素直に布団に横たわるレントの腕をノエルがぎゅっと捕まえる。
「朝まで布団から出ちゃだめですよ。あたしも目が覚めちゃいますから」
「わかりました、継承者殿」
 ……なんというか、年頃の男女というよりかは、世話焼きの小さな姉と礼儀正しい大きな弟のようだ。
「明かり、落とすぞ」
 ランプの光が消され、部屋に静かな暗闇が満たされる。
「お休みなさいませ、継承者殿」
「おやすみなさ〜い」




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Scribble <2007,10,06>