雨に関わる5つのお題
Share an umbrella 〜クリスノエル〜
「雨、やみませんね」
「本降りになってますね」
ノエルと二人で店先から空を見上げる。
大量の雨をおとす空は墨を流したように薄暗い。
「あたし、傘貸してもらえないかきいてきます」
「お願いします」
ほどなくしてノエルが戻ってきた。
「一本貸してくれましたよ〜」
「じゃぁ、それはノエルが使ってください。私は走って帰りますから」
そう言って雨の中に駆け出そうとしたクリスをノエルが捕まえる。
「ダメですよ! 風邪ひいちゃいます」
「私は丈夫だから平気ですよ」
「ダメったらダメです! 一緒にさして帰りましょう」
クリスの頬が淡く染まる。
「一つの傘で一緒に? それって相合い傘?」
……なんだか恋人みたいだな。
そんな考えがクリスの脳裏に浮かぶ。
……がすぐさまそれを振り払った。
どうせ彼女はそんなこと考えも、そう見えるかもしれないことにも気付いていないのだ。
「?」
……実際きょとんとしてるし。
「…………帰りましょうか」
「はい!」
一つの傘を二人でさして、互いに濡れないよう、互いを濡らさぬようぴったりと寄り添い合う。
それは彼らの意識がどうであろうとも、二人を恋人同士のように見せていた。
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