雨に関わる5つのお題

A talisman for fine weather 〜トランクリス〜


 しとしとと雨が降り続いている。
 もう3日になるだろうか、こうして雨のために部屋で過ごすのは……。
 どことなく湿った室内にクリスの荒い息だけが響く。
「……締め切った部屋で筋トレするの止めてもらえます? 部屋が汗臭くなるじゃないですか」
「しかし、毎日鍛練を、つまねば、体がなまって、しまう」
 クリスが腹筋運動をしながら言い返す。
「48……49……50!」
 腹筋運動の反動を利用してはね起きる。
「お前もどうだ? 少しはそのひ弱な体力がマシになるかもしれないぞ」
「遠慮しておきます。わたしは頭脳労働専門。体を動かす暇があるなら知識を深めたい」
「……そういいながら何やってるんだ?」
 トランの手の中には本はない。代わりにあるのはなにやら白い物体。
 クリスは彼の手の中の白い物体を見ながら言った。
「これ? あんまり雨が続くものですから、てるてる坊主を作ってみたんです」
 トランがクリスにそれを見せた。
 大きな目とニッコリ笑う口元が簡単にだが刺繍されていて、なかなかかわいらしい。
「……ぷ」
「何で笑うんですか」
「いや、そのてるてる坊主、ノエルに似てるなって」
「そう言われてみればそうかも。……目と口しかないのに不思議ですね。これで緑のリボンでもあれば完璧?」
「……そうだな」
 トランがてるてる坊主を飾るのを見ていて、ふとクリスは疑問に思う。
「よくそんな白い布があったな。しかもレース付き」
「あ、これはわたしのハンカチです。ほら」
 シワに隠れてわからなかったが、端の方にトランの名が刺繍されていた。
「…………」
 クリスがむくれたような顔でトランの名を隠す。
「あの、なんでわざわざ、わたしの名を隠すんです?」
「……別に」
 ……言えるわけがない。
 ヤキモチをやいてしまっただなんて! 




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