雨に関わる5つのお題
A puddle 〜フォア・ローゼス〜
「やっと晴れましたね〜」
ノエルが大きくのびをしながら言った。
「そうですね。結局10日間ほど降ってましたからね」
そのせいか、空気は澄み渡り、美しい空が広がっている。
「トランさん見てみて〜。カエルさんがいますよ〜」
ノエルに示され見てみると、そこにいたのは小さな翡翠色のカエル。
カエルはトランを見上げると“おはよう”とでもいうように、ケロっと一声ないた。
「雨があがって残念でしたね。いつまでもこんなところにいると、……喰われますよ?」
「喰う!? 誰が食べるんですかっ!?」
「いや、いやいやいや……。こっちの話です。気にしないで」
うっかり口をすべらしたトランがノエルに問い詰められているのを横目にクリスが不平そうな声をあげた。
「それにしてもすごい水たまりだな」
「クリスの服は白いから大変だな」
「でも水たまりが光を反射して鏡みたいですよ。きれい〜」
ノエルの興味がこっちに移ったようだ。トランがあからさまにほっとした顔をしている。
ノエルが水たまりを見つめ、話し始める。
「昔読んだ絵本に、水たまりの鏡の向こうにはもう一つ世界があって、もう一人の違う自分が住んでるっていうお話があったんです。皆さんは……どう思います?」
口調は彼等に尋ねるものだが、彼女の視線は水たまりに、水たまりの中の自分自身にそそがれている。
「そっちのあたし達は仲良しですか……? あなたも、幸せですか?」
彼女につられ、3人も水たまりを覗き込むが、無論何も起こるはずもなく……。
ノエルの周りに集う自分達の姿があるだけだ。
「……行くか」
「……そうだな」
エイプリルを先頭に仲間たちが先に歩いていってしまう。
「早く来ないと置いてくぞ」
「あ、待って下さいよ〜」
ノエルが彼等を追おうとしたその時だった……
……もちろん!
あたし達も仲良しで幸せですよ!
「……え?」
振り返っても誰もいない。空からの光を反射する水たまりがあるだけだ。
「今聞こえたの、あたしの声?」
「ノエル〜。本当に置いてっちゃいますよ〜」
きょとんとするノエルに仲間の声が届く。
彼等は優しい笑顔で自分を待っていてくれた。
「はい、今行きます!」
安心と喜びをのせて、ノエルは笑顔で仲間たちのもとへ駆け出した。
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