雨に関わる5つのお題

A rainbow 〜フォア・ローゼス〜


「雨〜」
「やまないな」
「こう降り続くと憂鬱になるな」
「そうですねぇ。洗濯物も乾かないし、イヤになります」
「……マメだな。っていうか雨の日に洗濯すんなよ」
「でも汚れが落ちなくなるし」
 ……雨が降り続いてもう10日近く、フォア・ローゼスの面々はダラけた日々を過ごしていた。
 この雨に覇気を奪われているのだろうか、クリスとトランの口喧嘩も発展しない。
「明日は晴れるでしょうか」
「晴れるといいな」
 エイプリルが窓辺に飾られている緑のリボンがついたてるてる坊主をちょんとつつく。
「頑張らないと首を切っちまうぞ」
 てるてる坊主が嫌そうに身をよじった。
 …………ような気がする。
「晴れたら金の鈴……でしたっけ?」
「……そうだったかな」
「それなら鈴を用意しておいた方がいいみたいだぞ」
 クリスが空を見上げて言う。
 つられて見てみると、空はまだ雨を落とし続けているものの、大分小降りになっている。
 これなら、明日の朝には晴れるだろう。
「頑張って天気にしてくださいね」
 ノエルがてるてる坊主を撫でて言うと、それは"任せて"というようににっこりと笑った。
 ………………ような気がした。


 
 部屋の中に明るい陽射しが差し込んでいる。
 少し湿った、しかし清廉な空気が部屋を満たす。
「……おはよーございます」
「おはよう、ノエル」
「トランさんなにしてるんですか」
「この子にご褒美を、ね」
 そうして見せてくれた彼の手の中には、緑のリボンをつけたてるてる坊主が誇らしげに金の鈴を輝かせていた。
「晴れたんですか!?」
「えぇ、きれいな青空ですよ」
 トランと並んで空を見上げたノエルは感嘆の声をあげた。
「わぁ〜♪」
「……なんだ?」
「何かあったんですかー?」
 今、起きたらしいエイプリルと顔を洗ってきたらしいクリスも窓から空を見上げる。
「ほう……」
「これは、すごいな」
 4人が見上げた青空には素晴らしい虹がかかっていた。
 思わず見とれてしまうような、大きな美しい虹だ。
「こんな綺麗な虹、初めて見ました!」
「えぇ、きれいですねぇ」
 トランが目を細めて見上げるその前で、ノエルがはしゃぎながら続けた。
「それにほら、見てください! 虹が空にかかるリボンみたいですよ!」
「あんまり雨が続いたから、空も久し振りにおめかししてるんですよ」
「そっか〜」
 にこにこと楽しそうに笑いあうノエルとクリスのちょっと後ろでエイプリルがつぶやいた。
「……よくあんな科白がでてくるな」
「……クリスって、たまに素でクサい科白をはきますよね」
 ……ちょっと呆れてる?  
 いや、楽しんでいるのか。
「さあ、早く仕度して出掛けましょう。ノエル、エイプリル、わたしたちは外に出てますから、ちゃっちゃと着替えて下さいね」
 そう言い残してトランはクリスと共に部屋を出た。
 そしてどちらかともなく表に出る。
 再び空を見上げ、感嘆の息をもらす。
「きれいですねぇ」
「そうだな」
「理屈では単なる光の屈折なのに」
「そうじゃない」
「え?」
 怪訝そうに振り返るトランにクリスは胸をはって答えた。
「これは、この虹は神からの贈り物。だからこそこんなにも美しいんだよ」
「……またそんなことを言う」
 さっきノエルにはいた科白は何だったんだ……。
 少々呆れたトランだったが、虹を見て思い直した。
「そう、ですね。こんな贈り物なら、誰からのものでも大歓迎です」
 ノエル達が笑顔で自分達を呼んでいる。
 そのうえには彼等を迎えるようにかかる美しい虹。
 ……今日はいい日になりそうだ。




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