朝に関する五つのお題
Fall back to sleep
戦闘城塞マスラヲ:ヒデオ&ウィル子
さんさんとした陽光が閉めきられたカーテン越しに降ってくる。
「(まぶしい)」
目をこすって腕を伸ばし、目覚まし時計をつかむ。それを確かめてみると、もう十時過ぎだった。
「(……。)」
布団を頭まで被ってもう一度目を閉じ……。
「二度寝すんなああぁぁあ!」
そんな絶叫と共に、ちゃぶ台返しの要領で敷き布団を返されて布団から放り出される。勢いよく転がり壁に激突したせいでチカチカと星が散らばる視界の先には仁王立ちするウィル子の姿。……いったいいつ来たのだろう。
「たった今です! っていうかマスター! なに二度寝しようとしてるんですか! 十時は寝直すような時間ではないのですよー!」
「……今日は、休みだし」
「休みだとしても、ゴロゴロしていい理由にはなりません! 特にマスターはそのままヒキコモリに戻りそうですし!」
……いや、戻らないから。っていうか戻らせてくれないから。
まあ、それはともかくとして目も覚めてしまったし、着替えることにしよう。
「せっかくの休みですから、ゴロゴロしたいのもわからなくはないんですが、規則正しい生活は大切ですよー」
……元・極悪ウィルスの言うセリフではないと思う。
「元は元。今のウィル子は電子世界の神です」
「……。そういえば。ウィル子はどうして、ここに?」
「遊びに来ちゃいけませんか?」
……もしかしてそれもあって余計に怒った?
「……ちょっと」
せっかく暇を見付けて遊びに来たのに、当のヒデオはグースカ寝てるし、起きたと思ったら自分に気付かず二度寝しようとするし……。それもあって、こう……プチっと。
「着替えたら、一緒に出掛けようか」
「ええっ!?」
「……なぜ、驚く」
「ヒキコモリのマスターが出掛けようって!?」
……いや、まあ。
出掛けるといっても、ちょっとそこの喫茶店までモーニングを食べに行こうかと思っているだけだから。
せっかく来てくれたのに白ご飯にふりかけではなんだし。
「気をつかわなくてもいいのですよー」
そうは言うものの、ウィル子の口元は嬉しそうにほころばせたた。
ポケットに財布や携帯、鍵を突っ込んで玄関に立った所でふと気付いた。
「ウィル子」
「はい?」
ふわふわと浮かぶ彼女の手をつかみ、軽く下に引っ張る。するとウィル子は何の抵抗もせずに地上に降り立った。
「ああ、そうですね。浮いて行くわけにはいきませんねー。……ついでに!」
ウィル子の体にノイズが走る。するといつもの服は消え去り、代わりにヒデオのものによく似た服が現れた。
「どうです? 妹に見えますかー?」
服を似せた所で顔がまったく似ていないのだから、それは無理があると思う。しかしまあ、この服装の方が目立たなくていいだろう。
「……行こうか」
「はい!」
満面の笑顔で差し出された彼女の手をとって扉を開ける。
「マスターマスター! どうせだから、このまま遊びに行きましょう!」
「それはまあ。後で」
ウィル子の手をとったヒデオの口元も、優しげにほころんでいた。
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