Nursing
クリスSide 02
「ん……」
なんだか、随分と長い間、眠った気がする……
「クリス!? ……やっと目が覚めたんですか」
怒っているような、笑っているような、泣いているような……そんな不思議な顔でトランが私を見下ろしている。
起き上がろうとしたが、うまくいかない。
私が苦労していると気付いたトランが起き上がるのを手伝ってくれた。
「一週間近く、眠り続けていたんです。しばらくはうまく動けませんよ」
……そんなに長い間、私は寝込んでいたのか。
「……その、すまない。皆に迷惑をかけてしまった……」
「いえ、別に……。こちらもその間のんびりしてましたから」
……絶対、嘘だ。
だって目を逸らして言ったトランはどこかやつれた感じがする……。
……私を気遣かっているのだろう。ここは気付かないふりをしておこう。
「なんですか? そんなにじっと見て……」
「いや、別に……」
……素直じゃない男だ。
「そういえばノエル達は?」
「……ああ、そうだ。ノエル達にもしらせてこなきゃいけませんね」
トランはそう言って立ち上がり、部屋から出ていこうとした。
……がその足が扉を出た所でとまった。
「……机にあるりんご。わたしの食べ残しだけど、よかったらどうぞ」
それだけ言い残して、足早に立ち去ってしまった。
……なんか逃げ出したように見えたのは気のせいか?
……まあ、そんなこと考えてもしかたがないか。
私はうまく動かない腕をのばして、脇にある机から皿を引き寄せた。
それを見て、おもわず笑みがこぼれた。
「……食べ残し、ね。」
確かに量は少ないけど、そんな事あるわけないじゃないか。
「本当に、素直じゃない奴……!」
その皿の上にあったのは、小さめにカットされた……愛らしいうさぎりんご。
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Scribble <2006,11,23>