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02


 トランは確か図書館に行くと言っていたのでそちらに向かう。
 ふと店の窓ガラスに写るのは金髪の美少女。それの真正面に立ち、気合いをいれる。
「あたし……じゃない、俺はえいぷりる、エイプリル。……よし!」
 ……まるっきりあやしい人である。
「おや、エイプリルじゃないですか」
「!? ……トラン、か」
 飛び出しそうになる心臓を飲み込み、ゆっくりと振り返る。そこには本を携えたトランが立っていた。
「そんなに熱心に見て。……それがほしいんですか」
 よくよく窓の中を覗きこむと、店内の目立つ所に華やかな色合いの…………下着が飾られている。どうやら女性下着の専門店らしい。
「ほしいなら買ってはどうですか? ……似合うか、ときかれても困りますけどね」
「……いや、いい」
 エイプリルは首を横にふると、そこから離れた。
「図書館に行くんじゃなかった、のか」
「……その帰りです」
 トランが携えた本を指し示してこたえた。機嫌のよさそうなところをみると、気に入った本があったのだろう。
「トラン、これから暇、か?」
「……帰って本を読もうと思ってたのですが。……いいですよ、お付き合いします」
「お茶でも飲もう」
 トランは目の前の少女をいぶかしげに見つめた。なにか、違和感があるのだ。
「それはいいんですが。エイプリル、なんか今日のあなたは変ですよ」
「そんなわけ、ない!」
 エイプリルが力強く否定するが、その言葉にさえ、違和感を感じるのだ。
「……あっちでよさそうな喫茶店を見つけたんです。そこでいいですよね」
「…………ああ」
 ぱたぱたとあとをついてくる彼女を見て、その違和感の正体に思い当たる。
「いや、まさか。……でも、この印象は」
「何をぶつぶつ言ってる」
 そう言って見上げてくるエイプリル。そこからうける印象は間違いなく彼女の……。
「……確証はない、けどたぶん」 
 トランはいぶかしげな表情を一瞬で引っ込めると、やわらかな微笑をうかべた。
「なんでもありません。さ、行きましょう。なんでもそこは『姫君のドレス』という名のクレープがおいしいらしいですよ」
「……ああ、早く行こう」
 エイプリルが嬉しげににっこり微笑んだ。




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Scribble <2007,11,17>