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05
「トランさんどこに行くんですか」
笑顔で隣を歩くエイプリルを物珍しそうに見つめるトラン。……いくら中身はノエルと知ってはいても外見はエイプリルである。本来のエイプリルを知っている彼からすると今の彼女が見せる表情は初めて見るものだ。……こうして見るとエイプリルもかわいらしい少女だなと思う。……普段のエイプリルはかわいらしさを感じるよりかっこよさを感じてしまう。
「トランさんってば!?」
「ああ、すいません。もう着きましたよ」
「え? ここって……」
そこはさっきトランと出会った店の前だった。
エイプリルがおろおろする間に彼はためらいなく扉をノックする。
「は〜い」
店の中から店員らしき女性が出てきた。そしてトランを見つけるとむっと顔をしかめた。
女性用下着店に男が何しにきやがった……とでも言い出しそうな雰囲気である。
トランは店員の冷たい視線をものともせず、エイプリルを彼女の前に押し出して言った。
「すいません、妹に何着かみつくろってくださいませんか」
その言葉に店員の態度が軟化した。
「妹さんの付添いですか。予算はどれくらいでしょう?」
「え〜と、このくらいで」
トランは店員にいくらかの金を渡すとエイプリルに言った。
「では店員さんと一緒に選んできてくださいね」
「え? えっとト……」
「わたしは店の中に入りませんよ? ……それともわたしに選んでほしいんですか」
エイプリルは思い切り首を横に振った。
「じゃ、いってらっしゃい」
「え? え? ええ?」
店員に連れられ、エイプリルが店の中に消えてから1、2、3……
「ひやああぁぁぁ!?」
……うろたえまくったエイプリルの悲鳴が聞こえてきた。
多分体のサイズでもはかられているのだろう。……服を作る時にも体のサイズを正確にはからねばならないのだから、下着ならばより綿密に、素肌からのサイズをはかっているのだろう。
「ずるいことをしようとした罰ですよ、ノエル」
さぞうろたえているだろう彼女の様子を想像すると、思わず笑みがこぼれてしまう。
「でもそんなことをさせたわたしにも非はあるか……」
少しだけ反省して、心に決める。いつの日か、彼女が何かを頼むようなことがあれば、それがなんであろうとも叶えてあげようと。
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Scribble <2007,12,08>